トウテムポール先生の作品が大好きだ。「東京心中」シリーズと『或るアホウの一生』が好きだ。手に入るだけ同人誌も買った。
 

とても人生哲学的だと思うのですが一切説教くさくないところが独特で、とても不思議。私だったらもっと押しつけがましく主張してしまいそうなんですが。
 

特徴的だなと思う点のひとつが、突き放し系の展開。

『東京心中4 アンタのドレイのママでイイ』104頁
矢野「お前が俺が大阪に行くことを嫌だと思うのはお前の自由だ 勝手に思ってればいい でもそれを表に出して俺を巻き込むな」
「それ以前にお前は一年かけて勉強して 嫌だと思うことを嫌だと思うだけしかできないのか」
「俺の影響力はそれだけなのか お前はそれだけで済むと思ってんのか」

『或るアホウの一生』1巻 26-27頁
師匠「睡眠はしっかりとる 学校で勉強をする お風呂に入ったり ごはんを食べたり 生活の時間も必要
将棋への時間は限られる
同じ三段の子たちの実力は同じくらい
来月からまた三段リーグは始まる。」
「さてどうすればいいでしょう。」
(高以良)「いや……だからあの どうすればいいんですか。」
「知らない。」


前者が、遠距離になりそうなカップルの片方の台詞。
後者が、将棋のプロを目指す弟子へ向けた師匠の台詞。
どちらもかなりキツい。
 
そしてどちらも当然のごとく「答えは相手自身が考えて出すしかない」と思っている。そしてきっと答えを出してくるということを前提にしている。
 
矢野さんも師匠も、あまりにも当然のように、宮坂や弟子たちを信頼している。
あるいは、自身が相手にしてやれることの限界をわかっている。

 

どちらの場合も、相手が「なんてキツいことを言うんだ、付き合えない」と思って離れていく可能性が十分にある、冷徹だと思う。
しかし作中では、言われたほうは、言葉をしっかりと受け止め、迷走しながらもがく。
その、人と人の間にあるなんだかよくわからない強さが、とても魅力的だ。