物語の未来に起きる出来事を予知的に示す方法を「フラッシュフォワード」もしくは「先説法」という。

 

たとえば福島聡『バララッシュ』第一話では、メインキャラクターである宇部と山口がアニメ映画の作画監督と監督となって夢を叶えた未来が描かれる。話数タイトルも「大団円」と、この話で示されたビジョンがまさに物語の結末部分であることを指している。

第二話以降では舞台は(第一話時点からみて)過去に遡り、高校生の宇部と山口が登場する。まだアニメの仕事を志す以前の彼らだ。以降は時系列にそって展開していく。

第一話でフラッシュフォワードを用いた未来像が示されることで、未熟な高校生である二人がどのように成長し、困難を乗り越え、成功を掴むのか、というその過程に読者の興味を集中させることができる。

また、「大団円」があらかじめ約束されていることで、大きな夢を叶え仕事を成し遂げるカタルシス、というポジティブな気風が作品の底に用意される。

 

また別の作品を紹介しよう。TAGRO『別式』第壱話冒頭でもメインキャラクター、類(るい)と切鵺(りや)の様子が描かれるが、こちらは決闘シーンである。類が切鵺に斬りかかるため走り寄るところで場面転換が行われ、その先は示されていない。フラッシュフォワードに加えて、「クリフハンガー」という、結末を宙づりにする手法が併せて用いられている。
決闘シーンでは、「かつての仲間はもういない」など、思わせぶりな台詞が発せられるが、この時点では意味する内容はわからない。類と切鵺がもともと仲間であったが、なんらかの裏切り行為があり、その関係が壊れてしまったということが窺える程度である。場面転換以降は日常シーンを交えつつ、類や切鵺を含むメインキャラクターの背景が少しずつ明かされていく筋書となっている。
読者は、いつかは決闘することになる二人がどのような親交を深め決裂したのか、最後には彼女らがどうなってしまうのか、ということに留意しつつ読み進めることになる。女子高生のように和気あいあいとした交流が描かれても、なんとなく不穏な空気を完全に払拭することはできなくなる。

以上、2作品を紹介した。フラッシュフォワードは作品の雰囲気づくりにおおきく関わってくる手法であることが言えるだろう。読者は、最初に語られた場面がいずれは訪れるということを念頭に物語を読み解くからだ。また、読者の興味の重点をどこに置くか、先に示された未来像なのかもしくはそこに至る過程なのか、ということも操作可能だ。これもこの手法の特徴である。